03.10.6空冷スターの悲劇<LNタイプ3>


「がらがらがら〜、ドッカ〜ン!」
世田谷のF氏は、運悪くこのLN360の最後の音を、ここ数カ月の間に2度も聞くハメに遭ってしまいました。LNといえば、今ではあんまり見かけなくなってしまいましたが、このクルマは程度も上々の、まさに“悲劇の空冷スター”として、その修理の栄冠を再び我々に託されたのでした。





まず車載の状態でシリンダーヘッドを降ろしてみました。ピストンがなんと段違いになっているではありませんか。

もし、ここでも問題が発見できず、シリンダーを抜く時は、一気に抜かずにピストンの一番下のリング手前で一旦ストップし、コンロッドのまわりにウエスなどを詰めておきます。ピストンリングが折れていた場合など、クランクケースへの異物の侵入を防ぐためです。

今回は、どのみちクランクケースを開けて、破壊された部分の破片を取り除かなければならないので一気に抜いてしまう。




やっぱり・・コンロッドがバラバラになって暴れた結果、スリーブをも打ちのめしていました。67φピストンにあわせてボアを拡大してあり、壁厚が薄くなっていたので、簡単にやられてしまったようです。

 


伴侶を亡くし、後家さんピストンも心なしか、くたびれて見えます。衰弱した相方を最後まで支えてきたムリがたたったのでしょう、、


ストックしてあったクランクは、残念ながらプライマリー側のスプライン形状がタイプ違いなのでNG。これはプライマリードリブンギヤの違い(ダンパ−付き、無し)と思われます。仕方がないので内燃器屋さんで2コいちで組んでもらうことにしました。



暴れたコンロッドはスリーブのみならず、クランクケースも破壊していました。これも手持ちのケースとそっくり差し換えることにしました。ケース上下、クランクキャップは三位一体ですので、よほどのことがない限り、セットで使用します。

せっかくなので、特に内側は徹底的に洗っておきました。それによりエンジンオイルの鮮度低下を最小限に押さえる効果があります。




今回はここまでです。クランク、シリンダー、ピストンの加工を待つあいだに他の部品も洗浄し、状態をチェックしておくことになりました。

<次回へつづく>