04.2.15 シリンダーを分解点検<水冷Z・GTLその2>


タイミングベルトが切れてしまった“Z・GTL”前回はヘッドのチェックまでで終了でした。今回はいよいよシリンダー(腰下)をバラしていきたいと思います。分解は組み立てと同じくらいの慎重さが必要です。分解しながら各パーツをひとつずつキビシくチェックしていきます。まずは分解前に外からの点検です。写真の印の部分がバルブがぶつかった部分です。キズも浅く、ピストンには悪影響はなさそうです。この段階では手でクランキングした感触、コンロッド、クランクのガタなども問題ありませんでした。それではいよいよオイルを抜いて分解です。


まずはクラッチ回り

フライホイールからクラッチプレッシャープレート(写真右)を分離するとクラッチ板が出てきます。(写真左)。前回オーバーホール時に新品パーツを使用している模様です。特にプレッシャープレートの爪先端はミッション側についているレリーズベアリングと接触する部分ですので距離を経たクルマはペネペナに薄くなっている場合があります。また、ディスクと接触する面の荒れもチェックして下さい。

オイルパン内の異物

オイルパン内部やストレーナー(矢印)についているゴミにも注目して下さい。だいたい少しはなんらかのゴミがいるものですが、そのゴミの材質をチェックして下さい。金属粉だと要注意です。繊維などは前回オーバーホール時のウエスかすなどかもしれません。このエンジンはどこからかはみ出た液体パッキンのカスのようでした。以前、ストレーナーにイヌの毛がびっしり、なんてこともありましたので多毛動物は作業所内立入り禁止ですね。


バランサー機構

EAエンジンの特徴でもあるバランサー機構のチェックです。スプロケットの歯の状態、ダンパーゴムの劣化、チェーンスリッパーの磨耗、チェーンの伸びなどもチェックします。コイツの場合、ここも新品を使用したようですので、再使用することにしました。組立て時には合わせマークをばっちり合わせて組み付けますが、ちょっとコツが必要ですね。

バランサー軸部分

バランサースプロケットによって回転しているシャフトの状態、とくにクランクケースのシャフト受け部分のガタをチェックします。ボアアップ時など、シリンダー加工後に気づいてもここが使えなくては元も子もありません。オモリがわには銅のメタルがはめこまれていますので、表面のカジリなど、問題があれば修正します。ここもオーバーホール済みのようで、全く問題なくツルツルでした。


クランクケースの点検

矢印部分がバランサーシャフトの受けです。全く問題ナシですね。クランクケース内部もオイルスラッジなどは前回取り除いている様子です。見えない部分ですが、こびりついたオイルかすを取り除くことでオイルの汚れを押さえる効果がありますので、できる限りきれいに洗浄しておくことをオススメします。

メタル(プレーンベアリング)の点検

クランク、コンロッドのメタルは銅色が顔を出していたら交換です。写真のものは新品が入っていましたのできれいな錫色をしています。エンジン回転音に同調する打音が聞こえているエンジンはメタルの磨耗が考えられます。タペット音よりはちょっと低くて重い感じのゴツゴツ音がします。


ピストンはオーバーサイズ

いよいよピストンです。リングの折れなど、やっぱりシリンダーから抜いて目視で確認が間違いありません。次の写真のシリンダー壁とあわせてチェックします。このエンジンはココにも問題無し。矢印部分にある数字はオーバーサイズの寸法です。これは0.25ミリオーバーサイズということですね。1mmまでオーバーサイズピストンが存在しますが、せっかくシリンダーを拡大するなら思いきって400ccオーバーにしてしまった方がおトクかもしれませんね。

シリンダー内壁の点検

写真では見えづらいかもしれませんが、シリンダー壁にクロスハッチ(ペーパーで擦ったような跡)が見えます。これがきれいに残っているようでしたらシリンダー加工後、あまり使われていないエンジンだと推測されます。この跡は使っているうちにピストンリングと擦れてツルツルになってきます。また、壁の段付きや縦方向のキズなともチェックして下さい。ピストンリングが折れていた場合など、深い縦方向のキズがついてしまうことがあります。


ここまでひととおりチェックしながら分解してきました。今回のエンジンは前回オーバーホール後、あまり使っていなかったことがお解り頂けたかと思います。オーナーの意向で、ピストン、シリンダー等に問題があれば430ccにボアアップ、問題なければそのまま360で再組み立てということでしたので、各パーツをよく洗浄して再組み立てです。交換部品はエキゾーストバルブ、ヘッドガスケット、各パッキン類といったところでしょうか。ここまでくれば組むのは早いですね。その前のパーツ洗浄と準備(作業台の清掃、片づけなど環境整備)でまるまる1日くらい費やす事になりますが・・・次回、組み立て、結果報告となる予定です、すんなりいけばね。ではまた。