04.6.8 N360・あやしいバルブタイミング


埼玉県からやってきたH氏のN360タイプ2です。ボンネットは600用、フェンダーはN1用になっているようです。毎日通勤で動かしてはいますが、アイドルが安定しない、力がない、とのことです。エンジンからガチャガチャ音も聞こえます。「タペット調整で音が治まるといいですけどね〜」ということで入庫しました。まずはバルブクリアランスを確認してから点火やキャブの調整をしようとヘッドカバーを開けてみました。

 


カムシャフトとクランクシャフトの関係

ファンベルトのプーリーに刻印されているマークで上死点を出してみるとカムシャフトがこんなにずれています。上死点ではこの赤線がヘッド上面と水平にならなくてはいけません。「こんなにずれててバルブとピストンが干渉しないの?それ以前にエンジンかかっちゃうのかよ?」と、なにが起こっているのか状況がつかめません。????

チェーンを掛け直す

とにかくチェーンを正規の位置に掛け直すべくチェーンテンショナ−をフリーにします。テンショナーを緩めるにはキャブレター、強制ファンなどを取り外す必要があります。この車のテンショナ−はかたくて緩まなかったので写真のごとくちょっと荒技で対処しました。


ロッカーアームをフリーに

チェーンテンショナ−を緩めるとだいぶチェーンがたるみますが、この状態でも掛け換えは困難です。ロッカーアームも全て緩めておきます。

カムホルダーを抜く

さらに左右のカムホルダーも外してしまいます。ホルダーを外すとロッカ−ア−ムシャフト部分からバネが出てきますので、位置関係をよく観察しておきます。ちなみにこのエンジンはタイプ3のモノのようです。


カムシャフトの位置を整える

ここまで外すとようやくチェーンの掛け直しが可能になります。クランク側で上死点を出しておいて、ずれないようにカムシャフトのスプロケットにチェーンをからめてやります。

タペットクリアランス

チェーンの位置を整えて復旧したらバルブのクリアランスをキメてやります。ロッカーアームシャフト軸受け部に若干のガタがありましたのでクリアランス調整もほんのちょっと手心を加えておきました。これでガチャガチャ音が消えるといいんですが・・


犯人はプーリー!?

組み上がったところでスパナでクランキングしてみますと、ピストンとバルブが干渉している感触があります。なんで???「これは目視の方がまちがいないな」ということでプラグを外してピストンの位置を確認してみるとプーリーの合わせマークがずれた位置で上死点がやってきます。プーリーを外してみると位置合わせのノックピンが入っておらず、デタラメに取り付いていました。

結果良ければ・・・

これだけの部品を取り外したにもかかわらず原因は最も意外なところにありました。きちんと確認して再度部品を組み上げて各部の調整をしてみると安定したアイドル状態を保てるようになりましたし、きちんと走るようになりましたので結果はオッケーですね。元々正規の位置にチェーンがかかっていたのかは今となっては不明ですが、エヌのカムチェーンは開けてみると1コマずれているなんていうのはザラにありますので人の手が入っているクルマはコワイですね。

空冷のチェーンテンショナーは油圧を得ることによって役目を果たしているので、久しぶりにエンジンをかけた時やオイルが少ない時などはチェーン特有のジャラジャラ音が出てしまいます。チェーンが伸び切ってしまった場合にも同様です。また、カムチェーンを掛ける時にはスプロケットのギヤがずれないように細心の注意も必要です。ちゃんと確認して掛けたつもりでもテンションがかかると位置が変わったりもしますので、組み付けにあたってはトライアンドエラーの精神で、何度も確認した上でエンジンを始動させる事が重要かと思います。

オーナーのH氏はクルマの調子を取り戻したことに気を良くして400ccボアアップ宣言をしました。また近いうちに入庫します。エンジンの発する異音も良くはなったものの完全には消えていませんので、次回はその辺りも気にしながら作業を進めたいと思います。

<N360・あやしいバルブタイミング おわり>