04.12.10  空冷、空冷、また空冷<N360・タイプ3>

空冷キング、空冷スター(近日公開、ミッションから機関車みたいな異音発生!)と続いてまたエヌが入ってきました。症状は漠然と調子が悪いとのことです。時々しかエンジンがかかりません。かかってちょっと走ったかと思うと、エンストしてまたかからなくなっちゃう。とりあえずキャブはあやしいですね。その他点火まわりを整えても調子は今一つです。やっぱり基本は“良い燃料”良い圧縮”良い点火”です。今回は“悪い圧縮”でした。


ゴムの変質に注意

前回プラグをねじ込んだ時にイヤな感触があったんですよ。ですので、入るとこまでであんまりきつく締めなかったんですが、プラグキャップを見て「なるほど!」と思ってしまいました。矢印部分のブーツがおっきくなってます。右側が本来の姿です。このような状態はガソリンや灯油に漬けてあった時の症状に似ています。オイルではここまで太らないですね。ということはプラグ穴からガソリン混合気が吹き抜けていたと考えられます。

空冷のプラグ穴はね〜

空冷の(水冷も)プラグは角度やシュラウドのおかげでとても差し込みにくいですね。しかもアルミですからちょっと斜めでもねじ込めちゃったりします。そのせいでプラグ穴のネジ山を壊してしまうことは少なくありません。このクルマも奥までねじこむと締めつけられずに空転してしまいます。エンジンを掛けた状態でブチブチと圧縮が漏れている音が確認出来ました。写真ではわかりにくいですが、ネジ山は完全に壊れています。


リコイル(ヘリサート)の下穴を開ける

以前になにかの本でヘッドを降ろさずにタップを切ってリコイル加工するというのを見たことがあるんですが、中に落とし込んだ切り粉を完全に取り除くことなど到底不可能ですので、とてもマネ出来ません。パイロットタップはネジ山の状態が良い燃焼室側から通して、すこし進んではエアと潤滑油を吹き付けつつ、きつくなったら少しだけ戻しながらを繰り返して切っていきます。タップ自体は反対側へ突き抜かせてやった方がよいでしょう。抜く時に切り粉が噛んでしまうのがイヤだからです。止りの雌ネジやタップ自体の形状によってはそううまくはいきませんが・・

リコイル挿入

リコイルの下穴タップ切り作業そのものは単純ですが、反面シビアな作業です。今回のような場合、斜めにプラグが入っていた為に山が壊れているので真直ぐにタップを立てないと新しい山にも欠けが生じたりします。通常のボルトを通すのであればそんなに気になりませんが、きっちりとネジ山が出来ていないとコイル挿入時にきつくなるところが出てきたりします。バッチリ掘れると適度な感触でコイルが入っていきます。もちろん質の良いタップをよく洗浄して使用するのは言うまでもありません。コイルが入ったら最後に矢印のツメを折って終了です。


カムチェーンテンショナー

たかだかプラグ穴の修繕なのですがカムケース、ヘッドは分解です。テンショナーを抜いてみたら矢印部分のOリングが入っていませんでした。う〜ん、

360ピストンはこれで限界

すでに360ノーマル最大の1mmオーバーサイズが入っているようです。この次なにかあったら400ccだね。この状態でコンロッド、ピストンピンのガタもチェックしておきます。


結局圧縮漏れ

というわけで圧縮が漏れていれば調子がイイわけないですね。カムケースのナットを締めたところまでが昨日までの作業で、本日カムやロッカーアームを組み込み、つい先ほどようやく終了しました。キャブを洗浄、調整しクランキングすると、すぐに力強く始動しました。そこそこの調子を取り戻したようです。今回はシリンダーまでは降ろさなかったのでピストンから下はチェックしていませんが明日試乗してみて、とりあえず第一ステージは終了となりそうです。

空冷スターがお見舞いに

心やさしいスターが手術中のエヌ3仲間を見舞いに来ました。自分も問題かかえてるのにいいヤツだね〜。でも、
「そんなところにいられたんじゃ仕事になんないんだよね〜」と作業中は表におっぽり出されてしまいます。
工場がせまいよ〜、



ウチのN3もこわれた〜

前回も書きましたが同じクルマが続く時は続くんですね〜。工場には修理のN3が2台、さらに我が家のN3もかみさんが近所の子供達を乗せたらシートヒンジのボルトが折れちゃいました。前回のライフは圧縮抜け。今回のエヌも圧縮抜け。抜けの部位は違いますが、なんだか連鎖しているようで・・

30余年も経ったクルマはみんなそれなり疲れているんでしょうが、過去にどれだけ大事に扱われていたかによっても状態に差が出てくるようです。エスなどと違って大衆車ですから過去のオーナーがクルマ好きとは限らないワケです。今の主婦みたいにオイル交換は車検の時だけだったとかね、ノーメンテだったとしてもおかしくないですね。現在所有している方々はもちろんクルマ好きな方々ですから不具合をちゃんと直して手をかけておけば、まだまだクルマも生き残っていけると思いますが、もっとも大切なのは日頃から動かしていることだと思います。人間もしばらく同じ体勢でいると足がしびれちゃったり、デスクワークのひとが腰を患ったり・・運動不足は老化の第一歩ですね。自分はモノを擬人化して名前をつけたりするようなタイプではないのですが、サブロクにはことあるごとに人間的な印象を受けてしまいます。だからオモシロイんですかね〜?

<空冷、空冷、また空冷・N360タイプ3> おわり

次回はまたまた戻ってきた“空冷スター”(LN3)の予定です。