05.4.9 昭和63年分解済み<N360エンジン組み立て・その1>

昭和63年頃にバラバラにしたN3のエンジンを組み立てて欲しいという依頼を頂きました。ミッションが入らなくなって、どこかのクルマ屋さんがバラしたっきり、なにかの事情でそのまま放置されていたそうです。今になってオーナーが再びエヌに乗りたくなったらしくウチに依頼が来たワケです。ボディーの板金塗装やブレーキなどの部分はオーナーが知り合いの板金屋さんで仕上げてくるということで、最終的にはエンジンの搭載までの依頼です。どうなることやら、とりあえずエンジンパーツ一式を持ちこんで頂くことになりました。


これは大変だぞ!

いよいよパーツがやってきました。洗わないまま放置していたらしく、ホコリとゴミと枯葉などが分厚く堆積しています。ボルトや細かいパーツ類も一つの箱の中に真っ黒になってごっそり入っています。事前のお話だと1.5台分くらいのパーツがあるとのことです。これだけでもクルマ0.5台分くらいのスペースを喰いますので早く組み立ててコンパクトにしないとウチの狭い工場では他の仕事ができなくなります。

以前にも紹介しましたね

この写真は今年のネオライフカレンダーでも使用しましたのでご覧になった方もいらっしゃると思います。ミッションが入らなくなった原因はこの部分のギア欠けのようです。すでにバラバラなのでどういった理由で欠けてしまったのかの判断が難しいですね〜


故障当時の原因が気になる

シフトリンク部分をチェックします。ドライバーを突っ込んでガチョンガチョンやってみますが、各ギアにシフト可能です。それでも心配なのでひっくり返してみたり、いろんなところを見ながら、気がついたら小1時間ほどガチャガチャやっていました。すっかり夜です。

可動部分も観察

とりあえず汚れを落として、今度はシフトプレートやシフトフォークなどのパーツに不具合や欠けなどがないか、どこかに異物が噛み込んでいないか、外されているパーツはないかなど納得のいくまで観察しながらのガチャガチャ作業は続きます。パーツを組んでケースを閉じてからでは取り返しがつかないですもんね。


いよいよパーツを組み込む

さていよいよパーツを組み込んでいきます。クランクのベアリングレースには位置決めのダボ(矢印)がありますのでケースの凹みと確実に合致させます。これを合わせずにクランクキャップを締め込むとケース、キャップ共に歪んで使えなくなることもありますので注意です。本来ならばこの時点でカムチェーンを通しておきます。

ミッションのギア部分

通常のオーバーホール時でもミッションのツリーは問題ない限り分解しない方が無難です。また、不用意に持ち上げたりするとカラーやシムワッシャーなどがバラバラと落ちてしまいますのでそれも注意です。今回はすでにバラバラでしたので一つずつ全て確認しました。組み込んでからツリーを回転させながら、クリアランスを確認しながら、またまたガチョンガチョンと各ギヤがスムーズに入るかどうかをしつこくチェックします。


しかたがないよね、

デフのフランジとプライマリー側サイドカバー部分のダストシールは入手が難しいのでシリコンスプレー漬けにしておきます。しばらくの間は朝工場に来た時にシューシューしてリップ部分をマッサージするのが日課となっていました。
デフフランジのダストシールはフランジを加工することによって現行の新品シールを使用することもできます。一度加工してしまえばその後シールの入手に困ることは無くなります。オイル漏れでお困りの方にはオススメです。この加工については直接お問い合わせ下さい。

ロアケースをかぶせる

納得のいくまで確認して、いよいよフタをかぶせるワケですが、おびただしいボルトの数ですね。パーツリストではサイズと長さと使用数しかわかりませんので(長さが明記されているだけ親切だと思う)ケースに通して突き出し量を見ながらしかるべき場所を判断します。また、シールワッシャーを使用する部分はオイルの回っているところなどを観察して判断します。「どこにどれがつくんだ?」などというお問い合わせはご勘弁くださいね。


ようやくここまで完成、まだまだ先は長いね〜

ここまで組み上がってようやくひっくり返せる状態になりました。とにかくパーツを洗浄するだけで数日かかっています。いよいよ組み立てとなると今度はボルトを探し出して洗浄し、1本ずつダイスを掛けるという気のなが〜い作業です。自分でバラしたエンジンでしたら分解時にも各部をチェックして不具合も洗い出しておけますし、パーツも分類して保管できるので断然作業もはかどりますね。結局見つからずに足りないボルトやパーツも相当数ありました。今回のようにバラしてから10年以上も経過してますと仕方がないですね。

エンジンに限ったことではないですが、レストア断念の理由としてよく聞く話しでは、作業を中断してしまった為にこのような状況に陥ってしまい、そのうち情熱も冷めてしまうということが少なくないようですので、パーツがホコリをかぶる前に、バラした記憶が新鮮なうちに効率良く作業することと、十分な予習、程よい妥協がレストア完遂のコツなのではなかろうかと思います。

昭和63年分解済み<N360エンジン組み立て・その1> その2に続く予定?