今回は中古で購入して約2ヶ月という三鷹市のBさんの水冷Z・GSSです。外観はかなり状態が良いのですが、最近エンストするようになってしまったとのことです。一度止まると5〜10分ぐらいかからなくなってしまいますのでドライブも綱渡りですね。いずれ立ち往生は必至ですので原因を突き止めて解決しておいたほうが精神衛生上もよろしいかとおもいます。 まずは試乗してみましたが、エンジンからもいろんな打音(異音)が発生しています。またスロットルの反応が悪く、加速もスムーズとはいえず回転の上がりにも谷間がありますので、ひととおりチェックすることにしました。 |
まずは燃料ポンプ エンジンストール後、しばらくすると何ごともなかったかのように復活する場合は燃料フィルターがあやしいですね。フィルターに詰まったゴミが時間をおくとストレーナーからはがれて燃料を吸えるようになるので復活するのですが、しばらく吸い続けるとまたフィルターが目詰まりするというワケです。Zの燃料ポンプはリアシート下にあります。相当働いていたようで異常に熱を持っていました。 |
フィルターの中はスゴイことに とりあえずフィルターを外してみます。通常でもスタンドのガソリンに混じったゴミが若干入るものですが、このクルマはこんなものが出てきました。サビというよりは細かい砥の粉のような状態です。こんなになっちゃってるんじゃタンクはきれいに洗ってコーティングしてやらないとフィルター交換だけではいつまでたってもイタチごっこですね。 |
このクルマの過去は この写真が今回のタイトルの本命です。タンク内をのぞいてみますと写真の線より上にサビが発生しています。ということは線より下まで燃料が入った状態で過去に長い期間放置(保存)されていたと推測されます。ガソリンに含まれる水分が悪さをしたのでしょう。こんな場合は走り出し当時には問題は出ないのですが、購入後ガソリンを満タンにするたびにこのサビが洗い流されて沈澱し、燃料ポンプによってどんどんキャブ方向へ送り込まれると言う訳です。 |
タンク内部の処理 まずはホースの水で徹底的にゴミを洗い流します。その結果、写真のように工場の敷地にサビの砂浜ができてしまいました。単車のタンク処理で定番の、古いボルトなどを入れてジャカジャカかきまわす方法も非常に効果的ですが、クルマの場合はタンク内部にバッフル(仕切り板)があり、引っ掛かって取りだせなくなったりしますので注意です。最近は効果絶大のタンク洗浄剤もあるようです。洗った後は完全に乾燥させてコーティングを施します。 |
異音の原因 まずはタペットクリアランスを整えてやりますとだいぶ静かにはなりました。しかしスロットルワークによって打音が出てしまいます。音の感じからするとメタルベアリングがあやしいのでオイルパンを開けてみますとまさにその通り、メタルのかけらが出てきました。成分を観察すると白銀以外に銅も混じってますのでこれは交換せざるを得ません。 |
オイルのせいかな〜? メタルを外してみますと片側のメタルが死んでます。ヘッド内部やシリンダー内部もかなりねっとりとしたオイル垢がありますので、過去にオイル管理が良くなかったか少ないオイルで走っていたか、また放置してあるとオイルも酸化して変質しますので中古車はまずオイル交換をしたほうがよいでしょう。メタルもこうなってしまうとココから先は消耗が早く、最終的にはクランクがイッてしまうのでこの時点で作業してよかったですね。 |
キャブもオーバーホール キャブレターは最近開けた形跡がありました。内部にゴミなどはありませんでしたが、フロートチャンバーの掃除くらいだったのでしょうか、ジェットの詰まりがありました。写真で見る右側は特に顕著です。うまく燃えなかったが為にススっぽいですね。加速ポンプダイヤフラムも新しいものがついていましたが肝心の通路がガッチリ詰まっていました。フロートレベルもまちまち、同調も狂っていましたので修正して再組み立てです。 |
整備第1段階終了 いよいよオイルを入れて点火します。まず、始動性が格段に良くなりました。スロットルのツキもまずまず良好です。続いて走ってみましたが、エンジンの打音が無くなったので気にせず加速できるようになりました。また、加速の谷間がなくなりましたので発進の時などのシビアなスロットルワークはもう必要無いですね。これでだいぶ運転手のストレスも減ることでしょう、よかったね〜。さて次はどこがこわれるかな?というわけで第1段階終了です。 |
しかし、みかけだけじゃわからないもんですね〜。これだけ古いクルマだとアタリハズレが大きくあってあたりまえです。どんな状態でもどこから入手してもみんな似たり寄ったりですからそれなりの覚悟が必要ですけど、悪くなったところは直せばいいわけですから、明るくとらえてどんどんサブロクに乗りましょう。不具合も楽しい思い出になるでしょう。そこを差し引いても古いクルマはたのしいですよ〜。 |
ライフ系、エヌ系共に指定プラグは写真左の“B”タイプです。このクルマは“BP”タイプがついていました。以前から気になっていたのですが、この"BP"タイプを装着している車両を非常に多く見受けます。写真ではススけていてわかりづらいのですが、BPは中心電極が少し長く突き出ています。一説によると“燃焼室中心に近づく為に早くプラグが暖まるのでチョイ乗りにはBPの方が良い”という意見もあるらしい、と聞きましたが、通常の整備においてBPで調子が悪くなったことはありますが、良くなった試しがないので私はそうは思いません。それなら標準のBタイプで番手を下げるべきだと思います。 また、燃焼室中心の方が温度が高いかといえば、そうとも限らないと思います。問題は“燃焼室のどの場所で着火すれば一番効率良く混合気が燃え広がるか”です。いくら古い設計のエンジンとはいえ世界のホンダの設計者なら当然そのことを考慮していたでしょうから、着火点がずれると不完全燃焼のスポットが発生したり、爆発の気流が乱れたりして吸入排気のスムーズな気流の流れを妨げてしまうような気がしてならないのです。あくまで推測による持論ですけど・・・でも“BP”の方が入手しやすいんですよね〜。“B”タイプはバイクやさんの方が見つけやすいかも? |