05.10.6 たまにはホンダ以外もね<ベスパ100・ヤンマートラクター>


今回は自前に近いところからの作業をご紹介します。
まずはコーヒー野郎の通勤用“ピアジオVespa50s改100”のフロントブレーキの修理です。ベスパは“しょっちゅう手をかけてあげないと乗れない”なんて通説もありますが、(通常出回っているモノがあまりにも調子が悪いせいもあるが)きちんと調子を整えてワイヤーの初期伸び期間さえ終わってしまえばあとはそんなに苦労することはありません。ただ、乗り続けていてもフロントブレーキは2年ぐらいの周期で固まります。ベスパは普通のバイクと逆でリアブレーキが重要でフロントブレーキは普段から動きも少ないですし、オマケみたいなもんなんで特にオイラのように雨ざらしだと余計にこの症状がおきやすい様です。しばらくはフロントブレーキをかけるたびに戻ってこないカムの部分を足で蹴飛ばして乗っていましたが、いよいよ開けることにしました。



フロントブレーキの分解

いきなり逆ネジ

まず、ブレーキワイヤーを緩めたらブレーキドラムを外してアクセルシャフトと一体になったドラムの台座を抜き取ります。反対側よりメーターギヤと一体型の13mmナットを緩めますが、これは逆ネジになっています。うっかりインパクトなどで正方向に回すとねじ切れてしまいますので注意です。ナットが弛んだら銅ハンマーなどで圧入されたアクセルを叩き抜きます。

ブレーキシューを分解

アクセルが抜けたらブレーキシューを外します。2枚のシューは強力なバネで連結されていますがドライバーなどをうまく使えば外すことができます。しかしシューの台座がアルミ製ですのであまりムリをすると割れてしまいそうなので慎重に。今回はカムと反対側のスタッド部分も固着ぎみで、動きが非常に渋くなっていました。

ブレーキカムを抜く

ブレーキシューが外れたらブレーキカムを抜くことができます。ここも水などの侵入により動きが渋くなっています。日本車の場合、カムとバックプレートの間にフェルトがあったりして異物の侵入を防ぐ工夫がされているモノがありますがイタリアではそんなサービスは皆無のようです。

ブレーキカム

カムのシャフト部分は“つるん”としてます。日本車の場合、グリスがからむようにミゾがついていたり螺旋状に筋を切ってあったりします。今回はちょっとでもグリスが保持できるように荒めのペーパーでラジアル方向にたくさんキズを入れておきました。たぶんあんまり変わらないでしょうけど気休めで・・

シューの組み込み

動きが悪くなるのを予測してなのか、ヤケクソみたいに強力なバネがついています。バネを引っ掛ける工具を持ってませんし、もちろんプライヤーなどで引けるシロモノではないので、片方を組み込んでからテコの原理でもう片方を折り畳むように組み付けます。

オススメ便利工具

シューを組み込んでアクセル、ドラムを復旧したらワイヤーを引いてブレーキレバーの遊びを調整します。上の写真でもわかる通り自転車の変速機のようにインナーワイヤーをボルトで締め付ける構造です。シューのバネが強力なので、カムを押さえながらワイヤーを引きながらボルトを回すとなると手が3本必要ですが、この工具を使えばイッパツです。このすばらしい工具はホーザンの“インナーワイヤープライヤー”という商品名です。ベスパオーナーは必需品ですね。

おおげさに書いておりますがここまで30分くらいの作業です。挑戦する方はボルトサイズ11mm,13mmと日本車ではあまりなじみのないサイズが出てきますので用意しておいた方がイイですね。もちろんワイヤー引き工具もブレーキのみならずクラッチや変速ワイヤーの調整でも大活躍しますので自転車屋さんで注文しましょう。


ヤンマートラクターYM2200(昭和49年前後製)

ヤン坊マー坊天気予報

というフレーズがつい出てきてしまうのは我々の世代だけでしょうか?隣の畑のおじさんが「トラクター直せる?」と工場にやってきました。ずいぶん年代物なのでいずれ来ると思ってましたよ。なんともいえないルックスがカッコイイですね〜。とりあえず様子をお伺いしてみましょう。

農機だけあって無骨な造り

エンジンなどは調子がいいんですが、副変速機のレバー(矢印)がプランプランになっちゃって低速で固定になってしまたとのことです。外から見た限りリンクが外れたりしている様子も無いので、こりゃギアボックスの中だね〜。

折れてる・・

メインシフトレバーを外して問題の部分を反対側から覗いてみますと、レバーの先部分が無くなっちゃってます。何のどんなものがついていたんだか気になりますので、磁石を使ってオイルに満たされたギアボックスの中を探ってみますとこんなものが出てきました。結構太いロッドが折れちゃってます。ずいぶん長いこと使われていたので疲労骨折ですね。

工場から最短のお客さん

このトラクターは普段は工場のすぐ横のシャッターの中に格納されています。間違い無く再短距離のお客さんという訳です。おかげでここの一画だけ昭和の風景になっています。昭和の車両だからこそなんとかしてあげたいところです。



このトラクターはヤンマーのYM2200型です。ディーゼル2気筒22馬力だそうです。排気音もでっかくてなかなか迫力もあります。畑のオジサンは「こんな古くてオンボロだしね〜」なんてあんまり気に入っていないようですが、ぜひとも直して乗り続けて欲しいですね。果たして部品は手に入るのか!、現在手配中ですが、部品が来てもうまく交換できるかどうかね〜。もしもの時の為に動かし方も教わったんですが、オンボロなので部品を針金で固定する微妙な位置などのオーナーにしか扱えないコツがあってとてもじゃないけど運転できそうにありません。車庫が隣でよかったです。この続きはまた改めてレポートします。

たまにはホンダ以外もね<ベスパ100・ヤンマートラクター>