05.10.31 やんなきゃならないとこだらけ<水冷Z360きみどり・その1>


鮮やかなきみどりの水冷Zにお乗りのKさんは久しぶりの女性オーナー。過去にここでもご紹介した“クルマはみかけじゃわからない”のBさんとはお友達だそうです。リフレッシュされたBさんのZと比べて「ワタシのクルマは音がウルサイな〜」ということで、クルマのことにも詳しい職場の仲間のカスタムしたミニと併走して工場に持ち込んできました。おっしゃる通りたしかにウルサイですね〜、まず、アイドルが3000回転もありましたから。でもそれだけでは済まない状態でした。その一連の作業の模様をご紹介します。



まずはエンジンルーム点検

オルタネーター曲がってる

アイドル回転の高さだけでなく、ありとあらゆる異音を発しています。エンジンそのものからも盛大に音が出ていますがオルタネーターのベルト付近からも擦れ音があります。のぞいてみますとステーがグラグラで本体がナナメになっちゃってます。ボルトはこれ以上締まらない状態なのに・・どうやら規定外に長いボルトを突っ込んであるようです。

タペットクリアランス

エンジン異音の原因をたしかめます。まずは分解しなくてもチェックできるタペットを点検しますとクリアランスが盛大に開いています。規定値に合わせ直して再始動してみるものの、やっぱりガチャガチャというメカノイズが消えることはありませんでした。


簡単に点検してはみたものの、上記以外にもあやしい箇所が沢山あります。また、過去にも開けたことがあるエンジンだということは明白です。もちろんオイル漏れなどはありますが、それ以前にとにかく水回りや配線なども含めて処理がきたなすぎて見た目に美しくない仕上げになっています。まず、その見た目で“内部もどんな作業を施されているのか”非常に不安になってきます。もちろん異音も盛大ですのでオーバーホールすることを提案しました。まずは開けてみてその上でどこまで作業するかを相談しながら進めていくことにします。

燃焼室内の様子

補器類を外してヘッドから順番に降ろしていきます。稼動していたエンジンなのでもちろんカーボンが堆積していますが、そのカーボンもかなりオイリーな状態です。また、ご覧の通り左右のシリンダーがバランスよく燃えていなかった様子が一目瞭然ですね。向かって左のシリンダーは外周部分がクランクケースからピストンリング隙間を通って上がってきたオイルで洗浄されていますし、プラグの状態から見ても特に左はうまく燃えていません。このクルマはシングルキャブですのでシリンダー、またはシリンダーヘッドになんらかの原因があると思われます。

オイル漏れもおびただしい

とりあえずシリンダーを降ろしてみましたが、ボルトも全く長さの違うものや、ボルト自体はいっていないところなど怪しさ満点です。また、オイル漏れはこのテのエンジンはあってあたりまえですが、このクルマはこれまたずいぶん漏れてます。ウォータージャケット内もサビの度合いも酷いものがありますので、かなり作業のしがいがありそうです。

あたりまえのように・・

「やっぱり」という感じでバランサーギアは両側ともちぎれていました。なんとかギアとは分離していなかったのでオイルポンプはかろうじて回っていたようです。でもとっても危険な状態ですね。メタル類ももちろん銅色が顔を出していましたが、ぺったんこにはなっていませんでしたのでクランクジャーナルもなんとか生きていました。

シリンダーの状態

シリンダーに新旧ピストンリングを入れてクリアランスをチェックします。古いリングは磨耗が激しく隙間規定値を大きく上回っていました。また、段付きの磨耗もありました。シリンダー自体は軽くホーニングしてリングのみ交換でいっちゃいます。

ピストンのカーボンとり

ティッシュにカーボンクリーナーをしみ込ませてラッピングし、一晩ほど浸け置きします。ヘッド側も同じように浸け置きです。シリンダー、シリンダーヘッド共にここからは泥やカーボンを落としてから更なるパーツチェックをしていくことにします。



ピストンはキレイになってから再度チェックしましたが、特に問題はなさそうですね。このまま再使用するつもりですが、あとはリング溝を洗浄して隙間チェックすればなお完璧です。次回はシリンダーヘッドのバルブ周りからチェックしていきます。さてさてどうなることやら。

やんなきゃならないとこだらけ<水冷Z360きみどり・その1>
つづく