06.2.3 昭和のトラクター修理<ヤンマーYM2200>



 

さて、今回シビレさせてもらったのは昨年の作業日報でもちらっと紹介したトラクター“ヤンマーYM2200”です。折れてしまった副変速機のロッドを交換するという、どうってことのないパーツの単純な交換なのですが、これを交換するのが結構やっかいだったのです。前回はネオライフの野郎コンビでいじくりまわしましたが、どうにもこうにも手に負えないという結果となりましたので、農機のメンテナンス業を長年やっていた“ゴミ大将”くんに出張してもらって一緒にシビレてもらうことになりました。


作業準備

まずは引っぱり出さないと・・

ブツはネオライフ工場となりの小屋の中にあります。我々では動かし方が全くわからなかったので、前回は小屋の中での作業でした。しかし今回はゴミ大将さすが専門家、簡単にエンジンをかけて自走で作業しやすいところまで移動させます。トラクターとしては小型の部類なのでしょうが、普段サブロクやフィアット500ばかり見ているオイラにとってはド迫力もんです。

問題のロッド

昭和49年頃のモデルですがパーツはヤンマーから入手できました。矢印部分のスプリングピンを抜いて交換します。これが折れてる状態なら取りだせるんですが、正規の状態だとミッションケース内に差し込めないんですよ。振動によりここが折れてしまうことは少なくなかったようで、こうなってしまったらだいたいの場合、新しいモデルのカタログを渡すそうです。

作業に取りかかるも・・

トランスミッションケース

例のロッドは矢印付近の側面から顔を出すように中から差し込むわけですがフォークのガイドシャフト(まん中の3本の棒)やギアなどがあるので角度的に差し込めません。さんざん、あれやこれやとやってみましたが、最終的にこのガイドシャフトを抜いてギヤをずらすしかないだろう、ということになりました。しかしシャフト達を抜くには前車体が邪魔になってきます。それにしても無骨な造りです。この造りや質感、構造は自動車よりも工作機械のほうに近い趣きですね。

いよいよ大手術

ガイドのシャフトを抜くには車体を2分割しなくてはなりません。この作業を通称“胴割り”と言うそうです。要するに前半分のエンジン側と後ろ半分の駆動部分を分割するわけです。胴割りが決定した時点でゴミ大将が「このへんって宿屋はありますか?」なんて言ってます。「いや〜、おれんちに泊まればいいんだけどさ〜・・・」と、こいつはエライことになってきたぞ!。とりあえずミッションオイルを抜いて前と後ろをつないでいる水冷ライン(矢印)のホースやリンケージなどを外していきます。

そして胴割り、車体2分割

重いよ〜、コワイよ〜

まずは後輪をブロックで固定し、エンジン側をジャッキで支えながらジョイントのでっかいボルトを外して前方へゆっくり移動させます。これがスゲ〜重たいの。2人で慎重にいろんなところをフォローしながら作業スペースを確保します。向いのおばちゃんもこの騒ぎに表へ出てきて「アンタ達そんなものもバラバラにしちゃうの?」なんて言ってます。「だって頼まれちゃったんだもん」お隣さんじゃ断れないでしょ。

やっと入った!

ガイドシャフトを抜いて各ギヤのシャフトもそれぞれずらしてクリアランスを稼ぎ、ようやく問題のロッドを納めることができました。製造過程ではこのロッドを一番最初に組み込んで、それからギアを組み込んでいく方法なのでしょうね。メンテナンス性については考えられてないのか、このロッドが振動などによって折れてしまうことを想定していなかったのか・・どちらにしても交換するにはこのおおがかりな方法しかないようです。

どんどん暗くなってくるよ〜

いよいよ復旧作業

写真は擬似的に増感してあるので明るく見えますが、空はどんどん暗くなってきています。分割した車体をつないで各部を復旧し、ペール缶で豪快にミッションオイルを注ぎます。なんと40リットル近くのオイルが入っていました。復旧は長年貯えた泥や土のおかげでめんどくさいことになってます。

ようやく試乗

ゴミ大将が試乗するころにはあたりはすっかり暗くなってしまいました。各ギヤへ変速することを確認しながら走ってみたところ結果は成功のようですね。軽快にトラクターを操るゴミ大将がなんだかカッコよく見えます。最後に車体後部に土を耕すアタッチメント(名称がわからない)を取り付けて作業終了です。


「やっぱり昭和車、いい顔つきしてるね〜、」

 
どうなることかと思いましたが直って一安心です。今回はゴミ大将君の活躍に尽きますね。コーヒー野郎は手元(アシスタント)として作業しました。専門職でもここまでの分解作業はあんまりやらないそうです。おかげでイイ経験、勉強になりました。とてもおおがかりで大変な作業でしたが、とても楽しい1日でしたよ。畑のオジサンにも「もしかしたらおおがかりな作業になるよ」とあらかじめ念を押しといたんですが、やっぱり乗り馴れたこのマシンが気に入っているそうで。偶然お隣さんだったんですが、とってもネオライフ的なオーナーだったというわけです。もちろん昭和車じゃなければ断ってましたけど。いや〜、作業は楽しかったんですが、もう壊れないで欲しいですね、こりごりです。「ゴミ大将くん、ほんとにおつかれさま、ありがとう。」

 

 

昭和のトラクター修理<ヤンマーYM2200>
おわり