06.5.13 小さいながらも超大物?<モンキーCZ100>・その1



 

去年の年末、LNキングのオーナーSSさんより「モンキーのエンジンやってくれない?」と依頼がきました。「もちろんやりますよ」と返事をしたまではよかったのだが、モンキーはモンキーでも、ただのモンキーではありませんでした。CZ100というOHVエンジンの車両です。しかも、エンジン番号と車体番号のつじつまが会っているオリジナル車両だそうです。自分にはよくわかりませんが、そんじょそこらの代物ではなさそうです。引き取りに行って現車を見てみると、フルレストア済みなのか各部までビカビカで、写真の状態でLNキングにのっかっています。このセットを運転して帰るのかよ〜、オカマ掘られたらどうすんの〜、とドキドキしますね。そんなわけで、その他スペアパーツもたんまりお預かりしてまずは無事工場へ辿り着きました。


分解の前準備

まずは現状の確認

オーナーいわく、エンジンはかかるものの白煙がひどく、マフラーの中にはドロドロのオイルがたまってしまうとのことです。まずはピストンリングが疑わしいですね。工場へ持ってきてまずはエンジンをかけようとしましたが、かかりそうでなかなかかかりません。この車両はキャブを降ろすにもエンジンを半おろしにしなくてはなりませんので、まずはキズをつけないようにいろんなところを養生しておきます。

いろんなパーツを外しておく

エキパイを外してタンクも邪魔なので降ろして、シートも汚れるとイヤなので外しておき、上側のエンジンハンガーボルトを抜いてエンジンを傾けてキャブを外します。この状態からヘッドカバー、シリンダーヘッド、シリンダーとバラしてみることにしました。各部にキズを付けないようにとっても気を遣うのでなかなか作業が進みません。

キビシイ状態!

シリンダー内壁

開けてビックリ、アラ〜ッという感じですね。かなり深い縦キズがしこたま入ってます。いくらカブ系エンジンでもこれはキビシイ!シリンダーはあらかじめ預かったスペアパーツと交換で決定ですね。

ピストンとピストンピンも!

ご覧の通りです。この状態から推測するに、過去にオイル切れによってかる〜く焼き付いた経歴がありますね。(分解時は十分な量のオイルが入ってた)特にピストンピンはほぼ噛み付いてしまったものと思われます。こうなってくると心配なのはピストンピンの相方であるコンロッド小端部の状態です。

やっぱりエンジンは降ろすことに・・

コンロッド小端部の状態

スペアパーツの中から状態の良いピストンピンを出してきてコンロッド小端部の磨耗をチェックします。(矢印方向のガタを点検)というか、見た目にグサグサで「これは〜・・」という感じだったのですが・・小端部、大腿部共に大きなガタがあります。コンロッドは大腿部でローラーベアリングと共にクランクに組み込まれていますのでクランクごとスペアパーツと交換決定。

エンジンを降ろす

クランクを取り出すにはクランクケースを割らなくてはならないので、ペダルやチェーン、ワイヤーなどを外してエンジン自体を車体から降ろさなくてはなりません。丸印はエキパイの中まで吹き抜けてきたエンジンオイルです。ニオイから判断すると燃えきらなかった生ガソリンも混じっているようです。しかし、これだけパーツを外すとホントに小さくて軽いです。

スペアパーツを検証

やっぱりワナがあった!

ピストンとピストンリングはスタンダードサイズの未使用品を預かっていたので、使用予定のスペアのシリンダーボアがスタンダードサイズであることを確認して一安心。しかし問題はクランクにありました。この車両のミッションは自動遠心クラッチタイプですが、スペアのクランクは通常クラッチのものらしく、クラッチ側のシャフトが短いクランクでした。こいつは困った。実はもう1台、専用スタンドにディスプレイされているコンプリートエンジンがあるんですが、これまたピカピカでバラすのはおろか、できればさわりたくないような代物。覚悟してこっちも開けちゃうしかないですね。

青丸印はピストン裏側の冷却と潤滑の為にオイルをかきあげるツメですね。
よくみると根元のギアも歯数は同じですが仕様が違います。


しかるべきところに展示してあったら
”お手を触れないでください”
という感じのルックス

 
しばらく前の作業なので随分と記憶も薄れていましたが、書いているうちにだんだん思い出してきましたよ〜。とにかく車体からエンジン本体から極上すぎて、触るのをはばかられるような状態なので困りもんです。もちろんワクワクはしますけどね。次回はいよいよこのエンジンもバラバラにしてクランクを取り出して、さらにすったもんだしてみます。

 

 

小さいながらも超大物?<モンキーCZ100>
その2に続く・・