06.11.16 バルブが割れたヘッドを検証<EAエンジン>



バルブが割れてる!



前回の予告通り、今回はバルブが割れてしまったライフワゴンのヘッドを順番に分解して、その状態を確認しながら原因を予想しようじゃないか、というお話です。(KABAさんお待たせしました)

このヘッドが載っていたクルマの状態はというと、まず始動不良、始動しても片肺の状態で吹けあがりが悪く、エアクリーナー側から炎を伴ったバックファイヤー症状をさかんに起こしていました。エンジンを止めた状態で手でクランキングするとあからさまに片側の圧縮がありません。「これはバルブ回りに間違いない」とオーナーに説明して責任をとる覚悟でヘッドを降ろしをさせて頂きました。


順番に分解

バルブを外す為には・・

カムプーリー、ブレーカーケースを取り外し、カムシャフトを抜く準備をします。次に丸印のナットを緩めてタペットアジャストスクリューを左に回しロッカーアームをフリーの状態にした状態でカムシャフト矢印方向に引き抜きます。手前のカム山が抜けたら半回転させると次のカム山がすんなりと抜けてきます。

バルブスプリングに到着

カムシャフトが抜けたらヘッドボルトのワッシャーを兼ねている2つのプレートを取り外し、バルブスプリングコンプレッサーが入るようにロッカーアームを矢印方向に倒しておきます。底についている六角穴のシーリングキャップのメンテナンスはこの状態で行えます。


そしてバルブを外す

バルブを抜くには・・

バルブを抜くには左写真のようなスプリングコンプレッサーを使用します。この工具でスプリングを縮めておき、コッターを取り外すとバルブを抜くことができます。バルブには場所の相性がありますのでどれがどこについていたか整理しておくことが重要です。整理にはページ一番下の写真のようなツールがあると便利です。また、スプリングには上下がある場合があります。

ここで問題発生

と、順番に外していきましたが、件の割れたバルブが抜けません。ロッカーアームのアジャストスクリューに叩かれている頭の部分が変型して広がっているようで、ガイドを通っていかないのです。このまま叩いたりするとガイドがダメージを受けますのでこんな状態のモノを抜く場合はサンダーなどでバルブを壊した方が得策でしょう。とりあえず今回は抜かないことに・・


バルブまわりの状態を検証

バルブ傘割れのメカニズム

写真左の丸印は通常状態のバルブの全閉位置です。×印のバルブは随分と潜り込んじゃってます。この状態になる前には間違いなくタペットクリアランスがゼロの時があったわけですね。(このクルマはクリアランス調整されてたみたいですが・・)ここまでになる前にバルブが閉まらない状態があったと思われます。閉まらない状態でタペットスクリューに激しくぶつかった為に、バルブの頭部分がガイドを通らない程変型したものと思われます。どんどん潜り続けてここまでになると、バルブの傘の端っこ(薄い部分)にバルブシートがぶつかって割れてしまうというわけなのです。右写真を見てもわかる通り、こうなってしまうとバルブシートも修正は不可能ですので打ち換えるしか再生の道はありません。さらにはガイドのダメージも心配です。


その他のパーツなどの検証

バルブガイドも割れてる

傘割れ以外の部分のバルブガイドです。インレット側は両方ダメになってます。片側は写真のごとく欠けていますし、もう一方は亀裂が入っています。ここ最近はインレットのバルブガイド割れが続出していますので、オーバーホールの際には必ずバルブを外してチェックさせて頂いてます。

カム山の状態も・・

ロッカーアームのスリッパーを持ち上げているカム山もかじりが発生しています。この部分は硬度を出す為に表面処理をしてありますので色が変わっちゃってるほどかじっている状態ですと、どんどん削れて減ってしまいます。(健康な状態は鏡面)使用していたものは当然若干は荒れていますが、表面をできるだけラッピングしてある程度目をつぶって使っているというのが現状です。


今回のようなバルブの傘割れはしょっちゅう起こることではありませんが、起こりうる現象です。(前回見たのはは4〜5年前かな?)前兆としてタペットクリアランスの異常がありますね。直接的な原因はバルブが潜ってしまうことですが、なぜバルブが潜ってしまうのか?このヘッドを見ると、カム山もかじってますし、ガイドも割れてます。ということは毎回同じ結論になってしまいますが、パーツの消耗を早める原因の全てはオイルなのです。もちろん、通常の点検やメンテナンスも重要ですし、動かせば可動部分はすり減ってきますが、長もちの秘訣はやっぱりオイル交換だと感じています。ただし、レーシングオイルなどは避けた方が良いでしょう。ぎりぎりまでクリアランスを詰めたレーシングエンジン用のオイルは古い設計のエンジンではパーツ間の油膜を保持できない可能性があります。設計された時代に存在していたものと近い種類のオイルが相性が良いのではないでしょうか?

ちなみに自分のエヌは乗りはじめて約8万キロの間エンジントラブルとは今のところ無縁です。中古で入手して以来、自分でエンジンを開けたことはないのです。ただ、乗りはじめてからマイクロロンを入れたのと、安価なオイルを2000kmごとに交換しているだけなのです。不具合を感じない限りほとんどいじらないですし、距離的にももうそろそろ壊れてもおかしくないな〜、とは思いますけど・・




新商品“バルブメンテナンススタンド”


今回の作業でも使用したバルブのメンテナンススタンドを販売開始しました。(写真のEA用で4800円)木製なので、使い込んで油が染み込んでくるとさらにいい味を出してきそうですね〜。こういうのを使っていると自然と気分も盛り上がってきますし、もちろん機能的でスマートです。製作は注文家具工房“タイムライン”さんです。バルブの数、穴のレイアウトなどオーダーによって対応してくれますので、自分だけのスペシャルな逸品となるわけです。これはいいですね〜。ご注文お問い合わせはネオライフで承ります。



注文家具工房”タイムライン”

 

 

バルブが割れたヘッドを検証<EAエンジン>
おわり