07.2.8 「お客さん、事件です!」その1<空冷Z>



くたびれた空冷Zがやってきた



はるばる愛知県から、見た目も機関もくたびれた空冷Zがやってきました。しかも、調子が良くないからわざわざ持ってくるのに、老体に(クルマがね)ムチ打って、下道で箱根の山を越えて来たそうです。このテのクルマは乗り手のおおらかさと根性が必要というわけですね。ホント脱帽です、まずはおつかれさまでした。

さて、作業は一通り問題を洗い出してみて、打ち合わせしながら進めていくことにしました。予定の作業はマフラーの穴、足周りのガタ、エンジン不調、その他マイナートラブルなどを解決して車検まで。さらににシート張り替え、板金塗装も、とのことでしたが、ボディはすでにパテだらけでモコモコになっちゃってて、天文学的な費用がかかりそうなので辞退させて頂いたのですが、たっての希望でぶつかっているボンネットだけ板金塗装することにしました。

そして、ここから次々と事件が勃発するわけなのです。


まずは足回り

順番に分解

特にガタがひどい右の足から。タイヤを回すとゴロンゴロンと波打っています。バラしながら順番にチェックしていきますと、ハブベアリング、ロアアームボールジョイント、さらにはステアリングラックも空冷特有のブッシュのガタが過大ですので、この周辺はほぼ全分解ですね。

ドラムの欠け

過去にドラムが抜けなくて苦労したと思われる、名誉のキズがありました。ドラム外周が3箇所欠けています。ドラムが抜けない時はプーラーを使用し、できるだけハンマーで叩くのは避けたいのですが、やむを得ず叩く場合はシューの当たる面や矢印部分は御法度です。できるだけ厚みのあるスプライン周辺部分などをそれなりの力で叩くようにします。


まずはかる〜く事件です!

ベアリング交換では済まなかったか・・

ゴロゴロのガタはたいがいハブベアリングのガタの場合が多いですが、このクルマの場合はドライブシャフトの矢印部分がやせ細っていることが原因でベアリングのインナーが踊ってしまっていました。こうなるとこのシャフトはこのままではもう使えませんね。なんとかならないものかと考えてみましたが・・次に続く

ドライブシャフト修正不可能

ドラムがはまる部分のスプラインもダメになっていました。山が磨耗してとんがっちゃって、ドラムを嵌めてもガタが出来てしまいます。仕方がないので、手持ちの中古シャフトを再生してドラムとセットで交換することにしました。このスプラインがこれまたやっかいで、タイプが何種類かあって、それぞれの互換性がないのです。カンベンして欲しいです。


同時進行で他の部分も

マフラータイコは例のごとく

このところ流行りのタイコ穴空きです。ホンダサブロクの排気管まわりはどのクルマもそろそろ限界なんでしょうね。車検のたびに溶接継ぎはぎで対処し続けるクルマも少なくないのです。特に、あんまり距離を走らないクルマはエンジンから出る水が溜って穴が空くようです。マフラーがチンチンに熱くなるまで走れば、あらかた蒸発するんですけどね〜。このクルマも鉄板を巻いて溶接にて補修しました。その他に、エキパイのポート出口付近も大きく裂けていました。それはそれは もんのすごい爆音でしたよ。


シートも張り替え

前席はビリビリ

シートは1ケ所裂けるとその他の部分もどんどん裂けてきますね。そのまま日光に当てちゃうと、今度は中のスポンジがボソボソになってきます。このクルマは表皮の張り替えと同時に中身のアンコと底面のバネ部分も修正して、さらに折れていた骨の補修も行なってすっかりリフレッシュされました。デザインはオリジナルを再現してあります。さすがにここまで手を入れると非常にラグジュアリ〜な座り心地となりますね。



今回はこんなもんでしたが・・



同時にボンネットも板金中!


こちらが作業をしている間に板金屋さんへボンネットを預けてきました。エンジン整備を行なうにはボンネットがない方が楽ですもんね。

まず第1回目は挨拶代わりのかる〜い事件のレポートでした。この先、作業が進むたびに何度もオーナーに電話したりメールを打つことになってくるわけです。さて、次回はどんな事件が・・

 

 

「お客さん、事件です!」その1<空冷Z>
その2につづく・・