07.3.10 「お客さん、事件です!」その3<空冷Z>



事件ファイル・その3



ダメになったプラグ穴を修正する為に、結局シリンダーヘッドを降ろすことになりました。エンジン内部を目視するということは、またなんらかの事件に巻き込まれそうな気配ですね。そして、その懸念が見事に的中、いや、予想以上の事態にみまわれてしまうのでした。


燃焼室をのぞいてみると・・

見たからには洗わざるを得ないですね

燃焼室はカーボンが堆積しています。特に(左写真の)左側の室は炭素がカーボンからさらに昇華して、ダイヤモンド寄りの物質に変化しています。これらをきれいに取り除くにはバルブは外してしまった方が手っ取り早いですね。

外したバルブの状態(右写真)を見る限り、左右で燃焼状態に差があることがわかります。手前のバルブはネトッとしていてオイルが混じっているような気配。ということはツインキャブの同調が悪かったという線は薄く、片側のシリンダー自体になんらかの事件が起きているのかも?!


とりあえずプラグ穴再生

まずはプラグ穴

いろんな心配は尽きないですが、まずはプラグ穴のリコイル加工に専念して、一時でも悪い予感を忘れることにしました。この部分のリコイルは真直ぐに打ち込んでやらないとプラグが斜めに入ってしまうので、作業には緊張感が伴います。ナメていたのは片側だけでしたが、もう片方もかなりくたびれている状況でしたので両方ともリコイルを挿入しておきました。

ブローバイガスの様子から・・

さて、エンジンの状態はいかに。果たしてシリンダーを降ろすべきなのか?!外から見れる範囲でエンジンの状態を予想してみます。シリンダーとピストンの隙間から発生するブローバイガスがヘッドカバーの排出口から多く出てきています。また、エアクリーナーのブローバイガスのホースがつながる付近がベトベトになっている状態も注意警報ですが、これはあくまで目安です。健康な状態でもガスは出ていますが判断材料はその量と質ですね。


やっぱりシリンダーも降ろそう

リングに問題アリ

上死点でピストンをゆすってみると、なんだかイヤな感触だったので、後悔しない為にもシリンダーを降ろしてみました。するとやっぱり!片側のトップリングが見事に折れていました。写真矢印部分の折れたところは大分やせちゃってますし、外周部分には段付きもあります。

ピストンにも問題アリ

ピストン自体はキズも少なく、まずまずのコンディションですが、リングを外してみるとオイルリングの穴という穴が全て詰まっています。なかなかにゾッとする状況ですね。やっぱりここまでバラして正解でしたね。


強制冷却ファン

ピストンリング再使用

Nのスタンダードリングは現在入手が不可能ですので、やっとのことで探し出した中古のトップリングを使うことにしたのですが、これも使用限度ギリギリの状態です。でもこれでいっちゃいます。トップリング以外は元の物を再使用しますが、オイルリングのエキスパンダーは掃除が大変。ブラシでガンガンこすると、ヨレてしまうので、ピックで溝のカーボンをを1ケ所づつ削ぎ落とします。これもとても気の長〜い作業です。

ピストン再生も地道な作業

詰まっていたオイル穴のカーボンは、ちょっと突いたくらいでは取り除けない程固形化しています。手元が狂ってリング溝にキズが入ってしまうのがコワいので、カーボンクリーナーを染み込ませながら細いドライバーでチマチマ貫通させました。両ピストン共、見事に全ての穴が詰まっていました。



事件はこれで終わりじゃないよ



組み立て待ちのエンジンパーツ達


結局、腰上はオーバーホールとなってしまいました。というか、やらざるを得ない状況だったのです。なにか不具合を発見する度にオーナーに連絡して報告するわけですが、こう何度も続くと言いにくいわけですよ。「こんなんなってますけど、どうします?」と聞いたところで、やらざるを得ないですから。もちろん一番ツラいのはオーナーですが、その告知をするオイラもまたツラいわけで・・

ここまでバラしたので、もちろんカムチェーンも交換し、これでようやくエンジン始動のメドがたったわけですが、度重なる事件はこんなもんでは収束しなかったのです・・・

 

 

「お客さん、事件です!」その3<空冷Z>
その4につづく・・