08.5.7 ガスケットが抜けた!<水冷Z>




水冷Z登場、外装はきれいだが・・



ヘッドガスケットが抜けて始動不能になってしまった水冷Zが入庫しました。作業内容については、『エンジンを開けて内部の状態を確認しながら打ち合わせして決めましょう』ということになりました。エンジン内に水が入ってしまうとオイルが変質してしまい、潤滑性能を失ってしまうので回転部分など心配ですね。というわけで、順番に確認していきましょう。




まずはクーラント混入現場を確認

プラグ穴から

さて、不調の原因はほんとにガスケット抜けなのか、もしかして他の部分から水が抜けてしまったのか・・・簡単にチェックするにはラジエターに水を張ってほんの一瞬セルを回してやるとわかります。抜けている場合はラジエターから「ボコッ」と水が吹き上がります。が、この車はすでにサーモカバーが外されているので水を張ることができません。ですが、プラグを外して手でクランクを回してみますとクーラントが出てきましたので、やっぱりヘッドガスケット抜けで決定です。

抜けの現場に到達

そうと決まればどんどんバラしてシリンダーヘッドを降ろします。抜けているのは右側のシリンダーです。ボアのリングが完全に欠壊してますね。長年のサビによる腐食のようです。ガスケット本体の芯の部分もグサグサになっちゃってます。ボアリングだけでなく、この部分を挟み込んでいるシリンダー、ヘッド側の当たり面の腐食の度合も要チェックです。サビに浸食されてクレーターができている場合などは合わせ面の研磨が必要になる場合もあります。



バラしながら気がついた不具合

スロットルリンケージ

写真はツインキャブのスロットルリンケージです。キャブとの結合部分のインシュレーターのバンドですが、よく見るとこの位置ではスロットルを開けたときにリンケージが干渉してしまい、全開になりませんね。インシュレーターのバンドを締めるときにはリンケージが干渉しない位置で固定することが肝心ですので、もうちょっと下の位置にしなくてはいけません。

サーモスタットカバーのボルト

ここのボルトはホントに折れることが多いです。パッキンからじわじわしみ出てきたクーラントによってボルトが腐食しているので、外すには『折るしかない』こともしばしばです。案の定、この車も折れていましたがなんとか抜くことができました。残ったねじ部分が取れないこともよくありますが、そんなときはドリルで掘り込んでリコイル加工を施します。






さて、エンジン内部は

やっぱり全部ばらしちゃいましょう

このあたりでオーナーと相談、ついでですから腰下も降ろして手をいれるべくところはやっちゃいましょうということになりました。ガスケットが抜けてから少々期間が開いてしまったので水が回った部分はサビも出始めています。クランク周りはメタルを交換、バランサーギア、ピストンリングも新調し、ヘッドはバルブを外してガイドのチェックとステムシールの交換、バルブもカーボン落しとシート当たり面の擦り合わせを行いました。



その他〜完成

ミッション側も少しだけ

エンジンを降ろしたついでにミッション側も少し手を入れておきます。ベルハウジング内が油でべっとりというのも珍しくありませんが、あまりにも漏れがひどくなるとメインシャフトを伝ってクラッチ板にオイルが回ってしまい、またまたエンジン降ろしになってしまいます。ですので、メインシャフトのガイドカバー(矢印)のオイルシールとパッキンを新調しておきます。これを外すにはレリーズベアリング周りのアームなどを一式取り外さなくてはなりません。

エンジン始動とともに・・

すべて復旧してエンジンが始動しました。ほどなく排気管からすごい量の水が出てきましたがご心配なく。ヘッドガスケットが抜けたときに排出されたクーラントがエキパイの中に残っていたんですね。とはいうものの、オイラも一瞬“ギョッ”としましたけど。これは一回り走ってやればすぐに乾きます。例えばピストンリング不良などでエキパイにオイルが溜まっている場合には、量にもよりますが、なかなか白煙が消えないこともあります。






最後の仕上げ



何回か水を抜き変えて完了!

ガスケットが抜けた状態だったので、水のラインにも若干オイルが回っちゃってます。まずは普通の水を入れてヒーターをかけて暖気。その後ひとまわり走って水を抜き換え。これを3回ほど繰り返し内部を洗ってやります。最初は油とサビまじりのよどんだクーラントが出てきますが、最後にはほとんど真水のような状態になりましたのでこの時点でクーラントを入れてやります。走り回りながらついでにキャブなどの微調整も行い、これで無事完成です。おかげさまで静かでいいエンジンです。


ガスケットが抜けた!<水冷Z>
おわり