08.9.23 まだまだ働いてもらうために・その1<TN360>




普段から仕事で活躍中



TN360が『ど〜ん』と入庫しました。バイクのカスタムペイント屋さんであるナベさんの仕事車です。最近まではガンガン荷物を積んで調子良く働いてくれていたらしいのですが、だんだんと吹けが悪くなり、ついには坂道を登るのがままならなくなったとのことです。どれどれ、空ぶかしでも回転の上昇がだる〜くなっちゃってますね。とりあえずポイント周りの調整でいければと思い、ネオライフの社用TNと取り替えっこでお預かりしましたが、原因はどうやらエンジン内部のようです。さらにカムチェーンのジャラジャラ音も捨て置けない状態です。ウチのTNと乗り比べたナベさんも自分のクルマの音のウルサさに納得!カムチェーン交換とからめてエンジン内部を確認してみることになりました。




ど〜んと降ろして、で〜んと据える

エンジン降ろし

ヘッドカバーを開けてロッカーアームの状態を確認してみたら、一カ所バルブクリアランズがなくなっちゃってます。パワーが出ない原因はこれでほぼ解決ですが、カムチェーンも取り替えなくちゃなんないし、クリアランスがなくなってるバルブまわりは、なにかしら問題アリのはずなんでエンジンをで〜んと降ろしちゃいます。空冷の場合はピストンリング割れも多いので是が非でも目視点検したいですよね。

エンジン直立で分解開始

それにしても、TN、バモスのエンジンは重たい・・んで、シュラウドを外すのがめんどくさいですね。シュラウドが外れたらこの先は立てた状態で作業します。狭い工場内の省スペースにもなるしね。この独特のルックス!見るたびウルトラセブンのキングジョーを連想してしまいます(改めて比べてみるとそんなに似てないか・・)どうやら一度開けたことのあるエンジンみたいで、ネジがついていないところ、ボルトが折れているところ、空冷フィンが欠けているところなどがちょこちょこありました。



バルブは予想通りか!?

ロッカーアームを外す

N、TN共にロッカーアーム周辺は独特な構造になっています。凝った造りと言えばその通りなんですが、クリアランス調整もコツが必要だったりして、どちらかと言うとライフ系の方が理にかなった構造ですね。構成部品のバネもサイズや径が違ったりしますので、どれがどこにつくのかきちんと解るようにしておくと組むときにラクチンです。オイラは自慢の専用スタンドを使って管理してます。タペットクリアランスが無くなっちゃった時に問題が出やすいカムシャフトの山、ロッカーアームの両当たり面はカジリや焼けも少なくまずまず良好な状態で一安心です。

問題のバルブはやはり・・

いよいよ問題のバルブに到達です。エキゾースト側であることを考慮に入れてもずいぶんとに白っちゃけてますね〜。予想通りバルブが潜ったことによりタペットクリアランスが無くなっちゃったようです。この状態で見る限り、バルブシートもダメージを喰らっているようですが、バルブ自体も傘の外周が薄くなってしまっているように見えます。詳しくは外してからじっくりと検証の余地アリですな〜。






伸びたカムチェーンの弊害

チェーンは意外と伸びる

写真はシリンダーヘッドの内壁です。カムチェーンが伸びてしまうとテンショナーでテンションをかけきれずにチェーンがたるんでしまい、スロットルのオン、オフの時に暴れて壁に激突しながら回転するのでこのように花道ができてしまいます(さらに症状が進むとこすれっぱなしかも)削れた壁は細かいアルミ粉となってクランクケース内部に流れ落ちていきますのでいいことはないですね。チェーンが健康でもテンショナーまわりの摩耗や不具合でもおんなじことが起こり得ます。

ホンダ空冷360は油圧によりチェーンにテンションがかかる構造ですので、しばらく乗らなかった時など始動直後にジャラジャラ音が出たりしますね。暖機後にブォーンと一瞬吹かしてスーッと音が消えて、そのまま静かにアイドルするようでしたらほぼよろしいんじゃないでしょうか。たとえば、走行時は静かでアイドル時にジャラジャラですと黄信号です。デロデロに伸びている状態のエンジンはジャラジャラと共にカンカンと打音のような音がすることもあります。

さらに突っ込んで考えるならば、伸びてテンションがかからない状態ですと、厳密に言えばバルブタイミングも狂ってしまいますね。とにかく、単車や自転車のドライブチェーンと同様、カムチェーンも意外と伸びるということです。



さらに分解検証

例のバルブは

やっぱり当たり幅が広くなっちゃってますね。(左のバルブ)で、このバルブだけサビの跡があります。放置期間中にサビてしまったのでしょうか?エキゾースト側のバルブガイドは両気筒ともガタガタでした。まとめて加工屋さん行き決定です。

ピストンリングは・・

空冷車に多いピストンリングの不具合ですが、とりあえず形が残っているので一安心です。ピストン側面の縦キズも少なく、予想外に良い状態のようです。最終的にはリングの摩耗具合やリング溝をきちんと点検しましょう。(そのときに問題が発覚するんですが・・)






ミッドシップ軽トラ



でろ〜んと降ろす

今回はいつもの通り、まずは分解しながらの各部の状態の確認でした。不具合の原因はほぼはっきりしました。あとは修正して組んでいけば終了〜、と思ったのもつかの間、またまたいろんなことがおこっていたわけですよ。そんなのもいつも通りと言えばいつも通りなんですが・・困ったね〜・・そのありさまは次回に続きます。


まだまだ働いてもらうために<TN360>
その2に続く・・