08.10.16 まだまだ働いてもらうために・その2<TN360>




ずど〜ん、ずで〜ん、ぼか〜ん



前回からのTN360エンジンリフレッシュ作業の続きです。カムチェーンのジャラジャラから端を発したこの作業、想定内とはいえ、とことんすんなりとはいきませんな〜。こういう状態を世間では『自転車操業』などと言ったりしますが、ネオライフの場合はもっと状況の悪い『サブロク操業』ですな。どん底・・完成させないとギャラを頂けないメカニックの世界、納車に向けて今回もスタート!




シリンダーヘッドとバルブの状態

シリンダーヘッドの状態はいかに

前回の記事の)バルブが潜っていた部分はバルブシートの当たり幅も盛大でした。この写真ではイン側はまずますな状態で、そんなに悪くはないですね。当たり幅が厚くなると気密も悪くなったりします。これは加工修正せざるを得ない状態ですね。

バルブ自体が原因かも

ダメだった箇所に組み込まれていたバルブは1本だけサビによると思われる腐食が激しく、外周が小さくなっていました。多分放置期間中に腐食したんでしょうね。錆びてたもんだからどんどん削れて小さくなってしまったものと思われます。これはもう使いたくないので、代わりの中古バルブを修正して使用することにしました。



バルブガイドとピストンリングの問題

元々のガイドからして謎?

両気筒ともにエキゾーストのバルブガイドは大きな隙き間でガッタガタでしたので、製作して打ち変えました。ちょっと謎なのは元々イン、エキゾースト共にステムシールを使用するタイプのくびれたガイド(黄色の円と同じ形状)が埋め込まれていました。Nなど空冷系はシールは全くなし、もしくはイン側だけ使用のタイプがありますが4本ともシールタイプは初めて見ました。もしかしたら、過去に打ち変えているのかもしれませんが、ステムシールはどれにもついてませんでした。(シールを使わない場合のガイドは右下の絵のような格好をしています)この車は実験的にすべてにシールをつけてみました。

ピストンリングの違和感

ピストン自体はキズやカジリも極少でなかなかいい状態です。リングもシリンダーにセットして合い口隙き間を計測したところ、良好な状態でしたので、カーボンを落としてリングをセットしようと作業を始めたら、片方のセットに見過ごせない違和感が・・何度触って確認してもトップリングが2本組まれているのです。要するにセカンドリングの場所にもトップリングが入っていたのです。写真の手書きの説明はリングの断面形状を極端に書いたものです。ホンダのサブロクは一般的にトップは角を落としたバレルフェイス形状、セカンドはオイルをかき落とすためにテーパーフェイス形状と呼ばれるものが使用されています。セットによっては燃焼にさらされるトップリングのみメッキが施されているものもあります。また、表裏にも注意ですね。問題のセカンドリングは工場内をひっくり返してなんとか中古品良品を探し出して事なきを得ました。もうギリギリです。






なんだよなんだよ、こんなところにも地雷かよ・・

地雷を踏んでしまったオイラ

せっかくエンジンが降りてるんだし、セルダイのキモであるブラシを点検しなくてはいけませんね。シロッコファンのところについている17mm頭の逆ネジボルトを緩めて・・とととコイツは逆ネジじゃないみたいだぞ、しかも頭が19mmだ。おかしいな〜、こんなのも初めてだぞ、さすがはホンダだけあっていろんなバリエーションがあるな〜。な〜んて思ってた訳ですよ、最初は。で、ボルトを抜いてみるとネジピッチも粗い、そして短い。これは????えっ・・・「ど〜ん」(地雷爆発!)

クランクボルトの役目

本来、このスペシャルボルトはファンからクランク軸までを串刺しにしてローターも一緒に締結しているべきなのですが、前の作業者がおそらく正回転で緩めようとしてねじ切ってしまったようなのです。(左の写真の?!部分にちぎれた部分が残っている)それで、米印のネジ部分(本来はロータープーラー用の正ネジ部分、1サイズ大きい)に合うボルトを突っ込んでファンのみを固定していたのです。ということはローターはクランクとのテーパーのはめ合いだけで固定されていたことになります。もしも外れちゃったら貴重なセルダイパーツがぶっ飛んでいたことになります。これは恐ろしいなんてもんじゃないですね。絵がテキトーなので解りにくいと思いますが、そんな時はパーツリストを参照してください。



というわけで落とし穴にずっぽり・・

スペシャルボルト

TN系のクランクスペシャルボルトは逆ネジで、しかもネジピッチが1mmという特殊サイズです。流用できるものがあるわけもないですね。どうしたもんだかね〜。ちなみにEAライフ系のカムシャフトのボルトも逆ネジになってます。写真の左からタコメーター取り出し用のボルト、真ん中がタコメーター無し用のボルトです。コイツは小さいから逆に回すとすぐにねじ切れちゃうよ。逆ネジのボルトにはきちんと矢印がついています。

なんとか調達

ボルトはもう造るしか無いですね。まずはカトーモータースさんのヤードの部品取りエンジンから見本を借りてきて、それを持っていろんなところに当たってみたけど、「こんな特殊なものは旋盤のバイトが無いよ」なんて言われたりしてね。なかなか難儀しましたが、頼み込んでようやく造ってくれるところを発見。もちろん転造品のオリジナルに比べて旋盤でひいたネジ山は強度ではかないませんが、そんなのは仕方が無いです、形になっただけでも感激モノ、涙涙ですよ。






ど〜ん、ずご〜ん、ぼよ〜ん



ネオライフ工場もいつツブれてもおかしくないので
次に作業する人のためにでっかく書いときました

というありさまでしたので、予定より1ヶ月も納車が遅れてしまいました。(こんなのの連続なんで、お待ち頂いている皆さんの車両が予定通り入庫できないというワケなんですよ、申し訳ないです・・)作業途中でオーナーもちょくちょく様子を見にきてくれていたので、その都度ぼやきも聞いてもらえて、おかげさまですご〜くいい状態のエンジンに仕上がりました。(オーナー曰く新車ね・・そんなワケないじゃん!)しかし、あのボルトをねじ切るとは相当なパワーのインパクトレンチですな〜。タイヤ屋さんとかにある機関銃みたいに構えて使うやつかな〜?とにかくコイツも直ってよかったよかった、まだまだ荷物を乗せて働いてください。


まだまだ働いてもらうために<TN360>
おわり