11.4.11 オイルだらだらネジ穴パカパカ・その1<N360・ホンダマチック>




ホンダマチ〜ック!


家の近所の中古車屋にたまたまあったという、ひょんなきっかけでN360ホンダマチックの新オーナーになったYさん。しかし、だいぶ不調のようです。5〜10分くらい走るとくすぶってエンジンがかからなくなってしまうとのこと。そんなときはプラグを交換してしのいでいたらしく、車内には新品プラグが沢山。「これでは実用にならないので一度バッチリ診てやってくれ」とのことです。ボンネットを開けるとエンジン周辺は見るからにアヤシイ感じぷんぷん。お預かりしてじっくり点検してみましょう。



まずはダイナモブラシから

N360Eはとにかくブラシがキモ

エンジンの調子がどうのこうのより、まず一番に点検しなくちゃいけないのがダイナモブラシです。このサイトでも何度も書いていますが、エンジン回転を上げても(1100rpm程度で)CHGランプが消えない場合は即刻エンジンを止めなくてはいけません。ローターやステーターが焼損すると代わりがないのです。ブラシの寿命はほとんど前ぶれがありませんので、時々残量を目視することも大事です。(写真参照)ブラシから生えているリード線が赤い矢印のところまでいくと完全寿命ですので、その前に早めに交換したいですね。

タイミングマークも大事

ブラシのカバーとクランクに直結されているプーリーにはマーキングがあります。このマークで圧縮上死点や点火タイミングを合わせるので、これが無いといろんな調整ができず非常に困っちゃうんですが、サビや汚れで見えなくなってることが多いのです。この車両も見えなくなっていたので、きれいに整えて赤い塗料を入れておきました。ホンダのサブロクは特に点火タイミングがシビアなので、きちんと合わせ込まないと調子が出ません。なるべく早めに点火した方が気持ちよく回るなどといいますが、Nやライフ系にはあまりオススメできません。



キャブレターも分解点検

キャブレターの内部をあらためる

キャブレターは細かい部品が多いのでパーツをなくさないように注意です。各通路の状態を確認したらフロートや加速ポンプ、チョークなどを調整して組み直します。ツインキャブの場合はバタフライの開度調整も必要です。また、フロートチャンバーのビス穴は非常にナメやすいので、慎重にねじ込む必要があります。このキャブも4本中3カ所がダメになっていてスクリュービスが入っていましたのでリコイル処理でネジ穴を再生しておきました。(右写真の矢印が正規の4mmビス)




そしていよいよエンジン分解

ボルト穴がやられてる・・

点火とキャブ、タペットもかるく整えたらエンジンの調子は取り戻せたのですが、走行して油圧を上げても消えないカムチェーンの音が気になります。あと、Nは多少オイル漏れがあっても全然気にすることはないんですが、このクルマは盛大に漏れてます。どっちにしても、バカになったボルト穴(矢印)の修理依頼もあったので各部の状態を確認しながら腰上を分解していきましょう。

ブレーカーケースの不具合

ブレーカーケースからも多量の漏れがあり、その下にあるダイナモステーターの中がオイルまみれになっていました。もしもブラシにオイルが回っていたら大変な事態になっていたところです。ここも通常使用でもじわじわと滲みがありがちなところですが、開けてビックリ、(矢印の部分)オイルシールのリップが裏返って一部変形しています。カムシャフトにケースを差し込んだ時にひっくり返っちゃったんでしょうね〜、オレも気をつけよう。



カムケースを降ろすとさらに衝撃!

パッキンがない!

カムホルダー、ロッカーアーム、カムシャフトを外し、17ミリのメインナット8個を外してカムケースを降ろしてビックリ、シリンダーヘッドとの間に挟まっているべきパッキンがありません。メーカーから純正部品が出なくてあきらめたのか、それとも調達が面倒だったのか・・・これではじゃんじゃんオイルが漏れるワケです。パッキンの代わりに、とばかりに液体パッキン(シール剤)がこれでもかというくらい塗ってあるのですが、右写真の赤丸のごとくオイルの通り道が塞がっちゃうくらいてんこ盛りになっています。これはヤバすぎますね、ここまでヤバいとむしろ男前です。




ヘッドカバーの裏側にチェーンの痕が・・


「こんなとこが削れちゃうってどういうこと??」


という感じで分解し始めたホンダマチック。オイル漏れがひどいですね。コーヒー野郎のNのエンジンルームを見たことがある人ならわかると思いますが(エンジン全体がひどくオイルまみれ)そんなオレが「これはマズいだろ」と思っちゃうくらいの状態でしたよ。しかし、どちらかというと漏れてる量もよりも“どこから漏れてどこに垂れているか”の方を気にするべきだったりします。今回はせっかくシリンダーまで降ろすのですからできるだけ漏れないように組み上げてやりたいもんですな、もちろんパッキンを使ってね。あと、ネジ穴も多数ダメになってるし・・ではまた次回。

オイルだらだらネジ穴パカパカ<N360・ホンダマチック>
その2に続く