11.8.19 テケテケ音〜ガツガツ音〜ご臨終・その1<バモスホンダ>




辿り着けなかったか〜、惜しい!


Nさんのバモスは以前より「テケテケテケ〜ッ」と異音を発していたのです。オレはその音を聞いて「あ〜、しばらく大丈夫じゃないっすか?」なんて言っていたのですが、その音を聞いたバモス乗りのみなさんは口をそろえて「やばいね〜」と・・・。で、約1年後、やっぱりそのうちパワーが無くなってきちゃって、ついにはエンジンがかからなくなってしまったのです。めんぼくない・・・、でも、ちょっと言い訳させてもらうと、Nやバモスなどの空冷系の組み立てクランクから音が出ちゃった場合は修復しようがないんで、その時点で手のつけようがないんですよ。ブローする直前に助手席に乗せてもらい長野の山道を走ってもらいましたが、テケテケ音がガツガツ音に変わってきてるので「これはもうやんなきゃダメだね」ということになって、後日工場まで走ってくる途中で力尽きて不動になってしまい、積載車にて運び込まれてきたという次第です。さて、いよいよ作業開始です。



まずはデーター収集

シリンダー圧縮の測定

クランキングの音や今までの経緯からいってエンジンがダメであろうことは予想できるんですが、念のため圧縮を計ってみることに。すると左シリンダーが3.4kg/cm3しかない。健康な状態でしたら10オーバー、測定やメーターの誤差も含め、少々へたっていても9は欲しいところですのでこれではエンジンがかからなくて当然ですね。というか、かかってもガツガツ音なんでどっちみちダメか・・・

エンジンオイルの観察

不具合は音の感じからしてクランクのガタであろうという予想なんですが、オイルを抜くと原因がより見えてくることもあります。例えばピストンやエンジンブロックなどのアルミパーツの不具合の場合は細かい粒子の灰色の粉がコーヒーにミルクを入れた時のようなマーブリング風に見えたりします。このクルマはその他に大きめのスチール片が底に沈んでいます。これは何でしょうか?バラしていけばわかりますよね。




エンジン分解開始

さあ、エンジン降ろし

TNやバモスのエンジン降ろしは様々な方法が考えられますが、ジャッキで支えてシフトロッドやハーネス、エキパイ等を外し、タイダウン等で吊りながら前後のマウントボルトを外すのが一般的でしょうか。車体下からエンジンを引きずり出すには写真のようなキャスターのついた代車が便利です。これはN用にあつらえたものですがバモスでも活躍します。

エンジンを立てる

エンジンが降りたら全体を覆っているスチールのシュラウド(カバー)を外していよいよ分解開始です。エンジンを立てた状態でカムシャフトまで分解したら一度寝かしてヘッドボルト(ナット)を緩めます。その後再び立てた状態にしてヘッド、シリンダーと分解していきます。立てた状態は決して安定が良い訳ではないのでくれぐれも転倒には注意です。




第一患部に到達

やっぱりクランクのガタだね

シリンダーヘッドを外して燃焼室を見てみると、圧縮の無い左側はガッツリ打痕がついています。ピストン側は(右写真の矢印)やはり左側ピストンが上がりきっていません。クランクとコンロッドの付け根のベアリングが破壊されて大きなガタが出ている状態です。この段差の分だけ上にも飛び出してくるのでヘッドとぶつかって大きな打音を発するという訳です。もちろんクランク軸とコンロッドがぶつかる音も出ますね。インレットバルブにも少々ぶつかっていたようですし、これでは圧縮がでないのも納得できます。




これはスゴイことになってるな〜

これじゃあオイルを吸い上げられないね

クラッチ周辺を外してサイドカバーを開けるとオイルストレーナーがあります(左写真)オイルポンプはこのストレーナー(フィルター)からオイルを吸い上げて各部へオイルを圧送するのですが、砕けた金属片が吸い口にびっしり張り付いていました。これじゃあオイルがまわらないじゃん。“潤滑不良”というのは全てのメカに取って致命的、ヤバイですね。この金属片はコンロッド大腿部に組み込まれているニードルベアリングがバラバラになって噛み砕かれちゃったものです。いや〜、エンジンブローってオソロシイですね〜。他の部分が焼き付いたりしてないかどうかが激しく心配。




この先いったいどうなるのでしょうか、


「とりあえずプライマリーギアはいい状態だ」


開けてみたら予想をはるかに越えたスゴイありさまになっていましたね。こんなにエンジン内に金属の異物がまわっちゃうと「他の部分にどんだけダメージ喰らってんだよ」と心配になっちゃいます。しかもホンダの空冷サブロクは単車エンジンよろしくのクランクケースとミッションが一体型なのでミッションギアなんかも全数確認しないといけませんな。旧いクルマは代わりのパーツが潤沢にある訳ではないので、手段を選ばずなんとか直さなくちゃいけませんが、たまたまオーナーがジャンクエンジンを1台持っているので、それとパーツを組み合わせながら、いいとこどりで1台組み上げる作戦です。それにしてもこれはやりがいあるぞ〜、とほほ・・・

テケテケ音〜ガツガツ音〜ご臨終・その1<バモスホンダ>
その2に続く