11.9.1 テケテケ音〜ガツガツ音〜ご臨終・その2<バモスホンダ>




やるぞ〜っ!


前回の続きです。トホホな状態を目の当たりにしてもなんのその、やるしかないもんね〜。こうなったらどんどんバラしてどんどん洗っちゃいましょう。まずクランクがダメなのは確定ですが、ほかの重要部品にはダメージが少ないとありがたいんだけどな〜。そんなわけで今回の作業スタートです。



上部から順番に

空冷前傾エンジン

TN系エンジンは非常に特殊な設計ですね。一般的な4輪車の様にエンジンとミッションが別体になっておらず、クランクケースにミッションやデファレンシャルが同居しています。TNの原型にあたるNの場合は単車エンジンのようにクランクの後ろ側にミッションを配置していますが、このエンジンはクランクより高い位置にミッションが乗っかっています。荷台の下に収めるべくエンジンを前傾させているので仕方が無いんですが、シフトリンケージは一番標高が高いところにあるのでオイルが少なかったりするとダメージを喰らいやすいかもしれませんね。このクルマの場合はしっかりとオイルとともに鉄粉もまわってましたけど・・・

ミッション取り出し

シフトフォークの組み込まれたケースをはがすとミッションギヤ一式が見えます。案の定ギヤやシャフト周辺にも鉄粉が回ってきているようです。また、オイルの通り道についているフィルタースクリーンが3/4くらい目詰まりしています。潤滑油が行き届かないというのは考えただけでもオソロシイですね。ときどきシフトロッドの渋い個体がありますが、長年動かさなかった車両の場合シフトフォーク付近でオイルが変質してネトネトになってたりすることが原因という場合もあるかもしれないですね〜。




穴という穴が・・・

しかしガンコに詰まってるな〜

シフトロッドのケースをよく見てみるとミッションシャフトを受ける部分(左写真)のオイル穴もがっちり詰まっています。鉄粉だけではなく、劣化したオイルのようなネトネトの黒いのも混じってます。また、クランクのメインベアリングのオイル穴(右写真)もヒドい・・鉄粉で完全に塞がっちゃってます。かなり重要な穴なんでこんなとこ通行止めだと困っちゃうんだよね〜。




そして組み立て準備

ミッションツリーはややこしいよ

ミッションも全部分解して鉄粉をきれいに洗い落します。バラす時にはギヤやワッシャーなど構成部品の順番や向きによく注意しながら作業します。また、ベアリングも新しいものと交換します。左写真のメインシャフトはプーラー等を使えば交換できますが右写真のカウンターシャフトのベアリングは手前にいるギアが圧入で組まれているので簡単に交換できません。壊してしまうと代わりもないので、この部分は加工屋さんに治具を作ってもらって交換も頼んでいます。なんとか抜けて、はめたはいいが、はめ合いが緩くなっちゃったりシャフトが歪んじゃったりしたらそれこそ最悪ですからね。ロアアームのボールジョイント交換などと同じで、力まかせは絶対御法度な部分なのです。




デフとかチェーンとか

デファレンシャル

デフのベアリングも交換しておきます。ここは本体とベアリングの隙き間が狭いのでプーラーの爪もかかりにくいですが、ヘタにこじったりすると本体がアルミなんで割れやクラックなど損傷のおそれがあるので注意が必要ですね。やっぱり力ずくはダメなのです。

カムチェーンも交換

エンジンを分解した時にはカムチェーン交換は必須です。写真の右側が古いチェーン、こんなに伸びています。チェーンの音がジャラジャラしはじめるとチェーンテンショナーを真っ先に疑うお問い合わせを沢山いただきますが、テンショナーはクランクケースを割らなくては交換できず、かなり大がかりな作業になってしまうので、まずはチェーン交換で様子を見ることをお勧めしています。チェーン交換だけならカムシャフトまでの分解で作業可能です。




だいたい準備は整ったぞ


「ピストンにはWPC加工を施してみた」


エンジン分解が終了して全パーツの洗浄、点検、修正が終了しました。あとはいよいよ組み立てです。結局、クランクとピストン、カムシェーンテンショナーはスペアエンジンから移植することにしました。ミッション等は状態を見比べて悩んだ結果、いままで動作していたものを使う方が間違いなさそうなのでベアリング交換と洗浄でいくことにしました。シリンダーヘッドはいつものごとく加工修正ですね。

また、オーナーより「せっかくなんでピストンにはなんらかの加工を施してみたいよね」とのご希望があったので内燃機屋さんと相談の上、WPC処理を施してみました。これによって金属表面を硬くかつ粘り強くさせると同時に、オイルの保持力が格段にアップするのでドライスタート時の焼きつきやかじり防止にもなるはずです。特にパワーアップしたりする訳ではないので効果を体感するのは難しいかもしれませんが、気持ちとしては安心だし、寿命の面でも期待できそうですしね。次回いよいよエンジン組み立てです。

テケテケ音〜ガツガツ音〜ご臨終・その2<バモスホンダ>
その3に続く