13.12.3 気絶する(したい)ほど悩ましい・その3<空冷Z GS>




いよいよ最終回


空冷ZのGSくん、前回の予告にもありましたように、カウンターシャフトの見逃せない摩耗が発覚してしまいました。部品取りエンジンの4速に積み換えてしまうという選択肢ももちろんあるのですが、そうなるとGSグレードの成り立ち自体が変わってしまいますので、なんとか対策方法はないものかと考えてみましたよ。



どう修正するか、それが問題

打ち合わせに次ぐ打ち合わせ

対策方法として真っ先に頭に浮かんだのが旋削で段を落としてしまい、そこにカラーを圧入して再び旋削で寸法を整えるという方法。しかし、その方法だとカラーが緩んで共回りしてしまう心配、そして旋削できてしまうくらいの柔らかさのの材料がニードルベアリングの相手として役不足で、結局はまた削れてしまうのではないかという心配もあります。それならばベアリングメーカーのインナーレースを圧入してしまうという方法もあるにはあるのですが、結局は寸法を合わせる為にシャフトを削り込むため『シャフト自体が細くなる』ことによってミッションギヤの応力に耐えられるか、という懸念も捨てきれません。

「どうせやるならきちんとやりたい」ということで、加工屋さんから『硬化肉盛/ハードフェイシング』という方法が良いのではないかと提案がありました。これはステライト盛りなどと呼ばれ、バルブの頭(タペットがぶつかる部分)や近代車ではエキゾーストバルブのフェース部などにも用いられているようです。かなりの硬さがあり、旋削はききませんので最終的な出来上がり寸法は研摩によって整えるという非常に手間のかかる加工方法ですが、その方法により修正したのが右の写真です。




ミッションまわり、4速と5速の違い

ムリがあるのかね?

ミッションギヤ類を組み込んだところです。5速の場合、一枚増えたギヤはクランクケースの外側になかば強引にセットされています。そのおかげで反対側にムリがかかってしまうのでしょうか?ちょっとわかんないですけどね〜

5速にはスペーサーで対応

4速で言うところのリバースギア部屋に一枚ギヤが増えた分、スペーサーを使って部屋の容積を稼いであります。リバースギヤの形状も4速とは違いますし、リバーススイッチもオンオフ動作が逆になるので専用品となります。




ピストン、シリンダーの組み付け

シリンダーとピストンを組み付ける

いよいよシリンダーをクランクケースに載せます。シリンダーにあらかじめピストンを差し込んでおいてクランクケースにシリンダーを落とし込みつつ、コンロッドとピストンの穴を合わせてピストンピンを差し込みピストンクリップをはめ込みます。クリップはちょっとつけにくいので、手が滑ったときにケース内に落ちないようにウエスなどでがっちり養生しておきます。




どんどん進めて・・

メタルヘッドガスケット

ヘッドガスケットは元々のものがあんまり良い状態ではなかったので銅のものを製作しました。銅板そのままでは圧縮もオイルもガンガン漏れちゃいますので、熱加工やボアまわりの加工が必須です。

タコメーターギアのオイルシール

空冷車のタコメーターギヤ付きの車両はここから激しくオイル漏れしていることが多いですね。ピニオンギア部分のオイルシールをリフレッシュすることによって良くはなればいいんですが、それでもダメな場合はギアボックス自体のへたりでシャフトが振れちゃっているので如何ともしようがありません。




完成でごわす!


「おわった〜」


なんだかんだいろんなことがありましたが無事完成です。5速じゃなければもう少しラクチンで早めにオーナーの元にお返しできたんですけどね〜。すでにボディにも手が入ってるし、これにてほぼ完成といったところでしょうか。とりあえず、かいつまんでレポートさせて頂きましたが、イベントにもよく出ている車両なので、さらにツッこんだ内容についてはぜひオーナーに聞いてみて下さい。

ではでは。

気絶する(したい)ほど悩ましい・その3<空冷Z GS>
おわり